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あっちこっちシアターインフォ(八戸情報誌 amuse 2018年04月号)

文:野沢亜由美(まぐねっと. com/Project Nitro(仮))

はちのへ演劇祭と私

誌面表示  2012年、7月。
 私は、携帯電話のメールの送信ボタンを押すべきか否か、悩んでいた。
 それまでの私なら、絶対に送信ボタンを押さずに、メールの下書きを削除していた。しかし、その時の私は、それまでの私と何か違っていた。
「もう、どうにでもなれ!」
そう言いながら(実際に声に出していたと思う)送信ボタンを押してしまっていた。
 そのメールこそが、『第一回はちのへ演劇祭』への参加申込みのメールだった。
 今の私があるのは、あの時、送信ボタンを押してしまった右手の親指のせいといっても過言ではない。今考えても、なぜあの時、参加する決心をしたのかは、よく思い出せない。
 あれから、もうすぐ六年。
 『はちのへ演劇祭』も今年で第六回。
 ありがたいことに、私は全ての回の演劇祭に関わらせていただいてる。
 私の演劇人生は、この『はちのへ演劇祭』なしでは語ることは出来ないだろう。
 第一回。再び演劇の世界に飛び込み、たくさんの八戸の演劇人たちと出会わせてくれた。
 第二回。第一回で出会った仲間たちと、初めて自分の書いた脚本で初めて演出というものをさせていただいた。
 第三回。憧れの演出家さんのもと、台本なしで、しかも建物や祭りの人でないものを演じた。今考えるとすごい無茶ぶり(笑)。
 第四回。郡山市から参戦。当然、他の人と出来ないから初めての一人芝居。撮影して、見て、直しての繰り返し。
 第五回。南部町出身の女優さんのもと、一般公募で集まった演劇経験者から未経験者が混ぜこぜになって『半朗読劇』を作り上げた。
 この『はちのへ演劇祭』というものは、本当に毎回いろいろな出会いを与えてくれる。仲間だったり、初体験だったり、尊敬できる先輩だったり、かわいい後輩だったり。そんな演劇祭が私はとても好きで、そんな演劇祭をやってくれるこの八戸という場が、ものすごく好きだ。
 私は以前、「演劇がやれるなら八戸以外でもいい」と思っていたが、最近では「できることなら八戸で演劇を続けたいな」と思うようになってきている。これは、間違いなく『はちのへ演劇祭』が作ってくれたいくつもの出会いが、思わせてくれたことだ。
 さて、第六回。
 今回は一つの作品で作・演出・キャストとして参加するのだが、八戸の方たちがあまり触れたことのないスタイルの作品を皆様にお届けしたく、今まで出会った私の大好きな演劇人たちと現在模索中である。
 今回の演劇祭は私を何に出会わせてくれるのだろうか。演劇って楽しいなぁー。


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