トップページ > アミューズ掲載記事見出し >> 2001年11月号
アミューズ(地元情報誌)2001年11月号掲載原稿
しもさき博之(八戸) |
DANCEがすんだ |
9月15日18時45分、ボクは公会堂文化ホールにいた。DANCE
WAG Live“MUSIC"。開演15分前だというのにそこは満席立見状態で、中央通路やや上手寄りの手摺りに寄り掛かりつつ開演時間を待つ。 そもそもWAGのダンスをカテゴライズするのならば何なのか?今では恥ずかしい呼称だが、やはり「JazzDance」なのか?「ぢゃずだんす」と言われれば、深夜の消費者金融のCMで、いきなりレオタード姿のおネエさんが踊り出すアレを連想しちゃう。うーむ、そーなるのかなァ・・・・。 定時に本ベルが鳴る。ゆっくりと客電が落ち、刻まれる音楽。緞帳が上がり、モノトーンの灯りの中に滑り込むように踊り出す6人のダンサー達。だが・・・・、 「キャ〜〜〜、○○さァ〜〜ん」黄色い歓声と手拍子。こらこらこらこらこらこらこらこらこらこらこらこらこらこら、いつからWAGは宝塚になっちまったんだ?お客さん、少しはダンサーのことも考えてやんなさい。マナー最低。 それはさておき、舞台上のダンスなのだが、む、やや動きに切レがない。不吉な言葉を思い出す。 「ウチ等も年だからさァ〜〜」 昼過ぎに楽屋見舞いに訪れたとき主宰沼尾美也子の口からこぼれた台詞。6人のメンバーのうち一人をのぞいた全員が30代に突入している。体力的にもピークは過ぎているに違いない。80分のステージを、たった6人で踊り通すことが出来るのか? しかしそれは懸念に終わった。プログラムが進むにつれ、舞台上の空気が明らかに変わり始める。 その手がその足が、空間を切り裂き舞台を踏み締める。無限の距離を引き寄せ、かき抱くように、突き放すかのように、踊り続ける6人。伸ばした指が掌が、包み込むように、慈しむように、時間を抱き締める。それをカテゴライズするなら、紛れもない「WAGのダンス」だ。 6人のメンバーは刹那たりとも一点に留まらない。観客は無駄な手拍子など忘れ、ダンスに飲み込まれる。満員のホールなのに不思議と熱気を感じられない。観客の視線が、ステージ上のダンスを触媒として、一瞬にして昇華されているかのよう。その際の気化熱でステージは冴え渡る。そうか、WAGのLiveが“Cool”なのはこれだからか。プログラムが終わる度に観客は我に返り、熱い喝采を送る。“Hot”と“Cool”、緩急の繰り返し。それがWAGのLiveなんだ。 要所要所の転換に散りばめられたVTR。モノクロのレッスン風景に被せてCG処理されたテロップ。WAG恒例の小意気な演出。WAGの本領発揮(?)とも言える「赤ジャージ」の老婆ダンス。コミカルなダンスの中にも冴えた動き。このあたりからメンバーは自分たちの踊りを楽しみ始めたように感じる。こうなって来たWAGは恐いもの無し。 沼尾美也子は「金髪」というよりプラチナブロンドにまで脱色された髪を振り乱しステージに立った。やはりその存在感は大きい。振り付けにも大きな変化が観られたように想える。従来の“Beat”で踊られていたダンスとは違う、極めてメロディアスなダンス。円熟期(?)に入ったメンバーの心境の現れか?成程、今回のタイトルが“MUSIC”だった訳だ。 カーテンコールとして踊られたジプシーキングス・ヴァージョン「マイウェイ」。シド・ヴィシャスの唄とは違う、「もうアタシたち、踊りしかないもんねェ」なる良質の、潔いまでの開き直りが伺え知れる。 踊り終え勢揃いした6人のメンバー。プラチナブロンドのオーラに包まれた女神たちは、荒い呼吸を押さえつつ、至福の笑みを浮かべている。 その瞬間、DANCEは澄んだ。 |
Photo by 中村邦雄 |
トップページ > アミューズ掲載記事見出し >> 2001年11月号